ログイン
詳細
ロングコートダディ堂前

9月30日(水) 劇場出番の合間にカレー屋さんへ。 よく行くカレー屋さんで、僕はいつもエビフライカレーのタルタルトッピングの甘口を頼むのだが 今日は少し趣向を変えて 「メンチカツカレー、ほうれん草とクリームチーズトッピング、中辛で」 と注文した。 ほうれん草が嫌いだった小学生の頃の自分に言ってあげたい。 お前は大人になったらカレーに自らの意思でほうれん草をトッピングしているぞ、と。 するとカレー屋の店主が 「かしこまりました。こちらへどうぞ」 と、奥の扉に案内された。 扉を開けると、冷たいアスファルトの階段が 地下の方へと続いていた。 店主に 「え?」と言うと 店主は 「はい?」と言った。 よく分からないまま、薄暗いその階段を降りていくとざわざわとした人の声のようなものが聴こえてくる。 階段を降りきると、大きな鉄の扉が目の前に現れた。 少し錆び付いたその鉄の扉を開けてみる。 その瞬間、 ノイズのように聴こえていた人の声が 大歓声へと変わった。 「オーバーレッド!勝者、ジャック荒木!」 プロレスのリングようなものの上で小綺麗な男がマイクで叫んでいる。 それを取り囲むたくさんの人間が大きな歓声をあげている。 リングの上には、ガッツポーズをした男が一人と 床に這いつくばり一切動かない男が一人いた。 どうやら地下闘技場に来たようだ。 行きつけのカレー屋の地下でこんなことが行われていたとは。そんなに美味しいカレーではないなと思ってはいたが。 「どちらにお賭けなさいますか?」 パキっとしたスーツの男が話しかけてきた。 男はパネルのようなものを持っており、二人の男の写真と名前が書かれていた。 デストロイ菊地 と、 ソーラーパネル芋太郎 だ。 僕はとっさに 「ソーラーパネル芋太郎で」 と言ってしまった。 「一口10万円でございます。何口いかれますでしょうか?」 と聞いてくる男。 僕はとっさに 「3口で」 と言ってしまい、30万円を払った。 すると、芋太郎が描かれた切符のようなものを渡され客席へ案内された。 しばらくすると、菊地と芋太郎の試合が始まった。 ゴングの音と共に、芋太郎が菊地へとダッシュしていく。 芋太郎は「おいもっ」と言いながら 菊地の顔面に強烈なビンタを食らわせた。 菊地は突然の攻撃にひるみながらも 芋太郎の左足に強烈なローキックを放つ。 芋太郎は 「いてえ!」 と言ったかと思うと すかさず 「おいもっ」と言いながら 菊地の右足太ももに 強烈なビンタを食らわせる。 思わず倒れこむ菊地。 思わず倒れこんだのもつかの間、 芋太郎が菊地を 「倒れるな」 と言いながら起き上がらせ 起き上がらせたのもつかの間、 菊地の顔面に強烈なビンタを食らわせた。 再び倒れこむ菊地。 そこでレフェリーが 「ストップ!」と言いながら菊地に近寄る。 レフェリーは胸ポケットから、 赤い丸型の薄い板のようなものを取りだし、 菊地のほっぺたの色と比べる。 しばらくの静寂の後、 レフェリーが 「オーバーレッド!勝者、ソーラーパネル芋太郎!」 と叫ぶ。 たちまちあがる大歓声。 ソーラーパネル芋太郎の圧勝だった。 換金所に行き、芋太郎の切符を渡すと 33万円を受けとることができた。 小学生の頃の自分に言ってあげたい。 お前は大人になったらソーラーパネル芋太郎のおかげでプラス3万だぞ、と。

前へ次へ
ロングコートダディ堂前のトーク
トーク情報