[新宿スワン]第9巻 和久井 健 著 講談社
第9巻は対比の巻、陰と陽の巻です。
第1話の冒頭は温泉旅行で宿泊した旅館での爽やかな朝。
バースト社長・山城と幹部・関との清々しいやり取り。
最終話の最後のページは打ちひしがれ、ため息をつきながらうなだれるタツヒコ。
闇金からの督促電話に追い込まれながら「ごめんねタツヒコ」と独り膝を抱えるマユミ。
第9巻では闇金の恐ろしさ、金の恐ろしさがしっかりと描かれています。
闇金地獄に飲み込まれるのは借りる側だけでなく借す側も同じです。
本業が思い通りにいかないからといって安易に闇金業に手を出してしまったスカウトマンの人格までをも変えてしまいます。
タツヒコは金を借りる側のマユミにも、貸す側になってしまう同期のスカウトマン・井出にもきちんと目を見て諭したにも関わらず、マユミも井出も安易な道を選んでしまいます。
第9巻はまさに闇金地獄の序章です。
タツヒコの言葉はいつも相手を想い、相手がその時一番必要な言葉を、相手の目を見ながらしっかりと伝えます。
第9巻でもタツヒコの姿勢に痺れっぱなしでした。
そして、僕が大好きな関の二つの場面での言葉にも痺れました。
一つは冒頭の温泉旅行の場面で社長の山城に対し、
「でもよ 頭なんて下げんなよ!社長らしくビっとしてろや!そしたらオレらぁ幹部 最後までついてっちゃるわ」
二つ目はタツヒコの昇進に対して不満を唱える牛尾に対し、
「牛尾さぁ ゴチャゴチャケチつける前に オメーらの仕事 キチっとやれや!」
関その場の状況を瞬時に読み取り、その場に必要な言葉を躊躇せず瞬時に出すことが出来ます。僕はそんな関に憧れます。
第9巻は闇金地獄の序章、と書きましたが、それ以外にも数々の火種が燻っています。これらの火種が第10巻以降、どのように絡み合い、どのような事態を引き越してしまうのか。そしてタツヒコはこれから待ち受ける過酷な事態の中でも、己を貫けるのか。
これから第10巻を心して読みたいと思います。
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